なぜ日本人は国際ロマンス詐欺に引っかかりやすいのか?
国際ロマンス詐欺は、外国人が日本人を偽って恋人関係を装い、金銭を騙し取る詐欺のことです。
国内では2018年頃から被害が出始め、現在に至るまで増加傾向にあります。
詐欺というと様々なものがありますが、中でも国際ロマンス詐欺は日本人に引っかかりやすいと言われています。
今回は、日本人に国際ロマンス詐欺被害が後を絶たない理由や、国際ロマンス詐欺の巧妙な手口、今からでもできる予防策などについて解説していきましょう。
SNSやマッチングアプリなどを利用している方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
■日本人に国際ロマンス詐欺被害が後を絶たない理由
恋愛感情を持たせることで金銭を騙し取るといった国際ロマンス詐欺は、国内でも被害者が続出しています。
では、なぜ被害者が多いのか、理由を解説していきます。
・SNSやマッチングアプリの普及
インターネット環境が充実したことで、近年はSNSやマッチングアプリを利用する人が増えています。
オンライン恋活やオンライン婚活などと呼ばれることもあり、若年層から中高年層まで、幅広い世代に浸透していきました。
特にマッチングアプリが普及したのには、2020年以降のコロナ禍によりリアルでの出会いが減少したことが要因と考えられています。
株式会社タップルと株式会社デジタルインファクトが共同で行った国内の市場規模調査によれば、2023年のマッチングサービス市場は788億円となる見通しです。
加えて、5年後の2028年には860億円に上ると予測されているのです。
相手の容姿に左右されず、内面に目を向けた出会いができるマッチングアプリは、出会いを求める男女からの需要が大きくなっています。
・晩婚化
国内で晩婚化が進んでいることも、国際ロマンス詐欺被害が増えている要因の1つです。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、18歳~34歳に結婚しない理由として、「まだ若い」「仕事に専念したい」「必要だと思わない」といった内容が挙げられます。
中には、経済力に欠け、結婚したくてもできないという状況もあるでしょう。
一方で、25歳~34歳の年齢層になると、「相手がいない」「出会いがない」といった内容が増えています。
晩婚化が進む理由は、独身生活の自由度が高いことや、女性の社会進出によって経済力が向上したことなどが挙げられます。
女性は結婚し、家事や育児と仕事を両立させることで仕事上不利になると考えているのです。
近年は少子化対策として、女性が家庭と仕事を両立させられるよう配慮する企業も多くなってきましたが、すべてではありません。
30代から40代においては、結婚相手を焦って探しているケースも少なくありません。
結婚に焦りを感じてしまえば、冷静に相手を見極める能力が欠けてしまう可能性があります。
晩婚化の加速は、マッチングアプリの利用者を増加させることにつながり、結果的に国際ロマンス詐欺の被害に遭いやすくなってしまうのです。
・恋愛経験が少ない
独身者が多いだけでなく、恋愛経験が少ない男女も増えています。
恋愛に踏み切る勇気がない人や、出会いが少ない環境にいる人、趣味や仕事に没頭している人など、その理由は様々です。
しかし、恋愛経験が少ないということは、相手の言動にどのような意味を持つのか、適切に判断する能力が身に付いておらず、まだまだ未熟な状態である可能性があります。
出会いの場がない人ほどマッチングアプリを利用する傾向がありますが、そこで詐欺師から甘い言葉をかけられることで騙されやすくなっているのです。
恋愛経験が少ない人は、マッチングアプリを利用する男性から「純粋」「かわいい」という印象を抱かれやすく、人気があります。
しかし、そこに注目する詐欺師も多く、標的になりやすくなるのです。
・現在の生活に満足していない
現在の生活に満足していない人が、日本人には多いです。
日常生活への満足度というと、経済上の貧富の度合いや社会的地位、居住地の周辺環境などが大きく関わってきます。
内閣府は、2021年に定点観測調査「国民生活に関する世論調査」を発表しています。
これによれば、全体の約4割が現状に満足していないことがわかりました。
現在の生活に満足していない人は、満たされるために恋人を求める傾向があります。
しかし、国際ロマンス詐欺はそんな満たされたいと思っている人をターゲットにしているのです。
詐欺師は、相手のプロフィールやSNSなどの投稿をチェックすることで、何を望んでいるかを調査します。
そして相手が喜ぶような言動を取り、満たしてあげることで感情をコントロールしていくのです。
■国際ロマンス詐欺の手口とは
国際ロマンス詐欺は、被害者に恋愛感情を抱かせて信頼関係を築くことで、様々な要求をしてきます。
そのため最初は詐欺だと気付きにくく、非常に巧妙です。
ここでは、国際ロマンス詐欺の手口をご紹介します。
・理想の人物像を演じる
詐欺師の特徴として共通するのが、SNSやマッチングアプリのプロフィール画像の顔立ちが整っていることです。
まずはターゲットのプロフィールや過去の投稿などを確認した上で、恋愛における価値観を徹底的に調査し、容姿から男性や女性のタイプになりきっているのです。
例えば、プロフィールに好きなタイプ、理想の年収や職業などを記載していた場合、それらの条件を満たす人物を作り上げてから接触してきます。
そのため、狙われた被害者は最初から騙すためだと気付かずに、自分のタイプに迫られたことに嬉しさを感じてしまうのです。
詐欺師は、経営者や医師、弁護士などのような高収入の職業に携わっていることをアピールしてくる傾向もあります。
それは、パートナーを探している相手に、少しでも魅力的な人物像になろうとしている証拠です。
また、詐欺師は被害者の心を掴むため、早い段階で愛情を示します。
恋愛感情を抱かせることができれば、金銭を騙し取るのも容易だと考えているのです。
・同情を引く話をする
詐欺師は、被害者の同情を引くような話をしてくる傾向があります。
例えば、「幼少期に両親が離婚し苦労してきた」「離婚してシングルマザー・シングルファーザーになった」「身内に難病を患っている人がいる」などです。
どのような話題だったとしても、たどり着くのは「お金に困っている」ということです。
詐欺師は、ターゲットから少しでも多くの金銭を騙し取ろうと考えています。
だからこそ、同情を引く話をして相手が行動に移してくれるよう働きかけていくのです。
このような事例を見れば、「ありきたりだから自分は騙されない」と考える人もいるかもしれません。
しかし、恋愛感情を抱いていれば、他愛のない話でも親身に相談に乗ってしまうものです。
詐欺師は行き過ぎたストーリーにならないよう、つい同情を抱いてしまうような不測の事態を作り上げているのです。
■国際ロマンス詐欺に遭わないようにするためには
国内でも頻発している国際ロマンス詐欺ですが、騙されないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。
ここでは、詐欺に遭わないようにするための予防策をご紹介します。
・出会いに慎重な姿勢を持つ
国際ロマンス詐欺の被害に遭うのは、ほとんどがSNSやマッチングアプリで出会いを求めている人です。
出会いを求めている人にとっては、新たな出会いが叶う便利なものではありますが、詐欺師はこうしたツールを悪用しています。
マッチングした相手が外国人の設定になっていたり、自分の好きなタイプだったり、プロフィール画像を見て容姿が魅力的だったりする場合は、注意が必要です。
最近は、トラブルを避けるために運営会社もセキュリティ体制を強化している所も多いですが、それでも慎重になって注意するに越したことはないでしょう。
・出会ってすぐにアピールしてくる人物を避ける
詐欺師は、出会ってすぐに愛情をアピールしてくるケースが多いです。
マッチングアプリ利用者は、恋活や婚活を目的に利用しているため、リアルな場で出会うよりも恋愛に対して積極的です。
それでも、出会ってすぐにアプローチしてくるようなら注意しなければなりません。
早い段階でアプローチしてくる人物は、すぐにLINEを交換したがります。
そして、結婚を匂わせながら甘い言葉や恥ずかしくなるようなセリフを囁いてくるでしょう。
詐欺師の目的は、金銭を騙し取ることです。
効率的にお金を奪うために、出会いから交際までを早い段階で展開しようと考えているのです。
・投資話や金銭の話が出たら関わらない
純粋な出会いを求めている人物ならば、金銭の話を持ち掛けてくることはありません。
しかし、国際ロマンス詐欺は必ずどこかで金銭の話題を持ち出します。
どんな理由であっても、金銭的な援助や投資話、副業などお金が関連している場合は警戒しなければなりません。
別なサイトに誘導されたり、同情を引く話をされたりした場合は、相手をブロックして関わらないようにしましょう。
運営会社に通報すれば、相手を厳正に対処してくれる可能性が高いです。
しかし、もしも既に金銭の被害に遭っている場合は、証拠を残すためにもすぐに通報せず、先に警察や法律事務所、国際ロマンス詐欺問題を扱うNPO法人などに相談してください。
・信頼できる人に相談する
連絡を取り合っている相手に不審な点を感じたら、信頼できる人に相談して状況を把握してもらいましょう。
相談するのは、両親や兄弟姉妹、会社の同僚、先輩など心から信頼している人がベストです。
被害者が相手に恋愛感情を抱いている場合、冷静な判断ができなくなる可能性があります。
しかし、第三者の目で状況を見てもらうことで、詐欺に気付ける可能性が高くなるのです。
身近に相談できる人がいない場合は、国際ロマンス詐欺案件を扱ったことのある法律事務所や、NPO法人などに相談しましょう。
■まとめ
国際ロマンス詐欺は世界各国で被害者が出ていますが、日本人の被害者も年々増えています。
SNSやマッチングアプリで素敵な相手に出会ったという方もいるかもしれませんが、中には国際ロマンス詐欺師も潜んでいます。
被害に遭わないためにも、手口や対策を理解し、相手を慎重に見極める必要があります。
万が一被害に遭った時には、警察や法律事務所、NPO法人などに相談しましょう。